雪が降りしきる狭い山道をゆく。タイヤがスリップしはじめた。もう、これ以上はむりだろうか? 山峡の集落にさしかかりUターンできる場所を探していると、四、五人の男性がひとかたまりになって、なにかしているところにでくわした。なにをしているのか? 台の上になにかのせ、ホースでお湯をかけている。台の上に横たわっているのは……大猪だ。猟師が猪の解体をしているのだ。
これから、猪鍋の季節が本番となる。猪肉の多くは地元の猟師からわけてもらう。地元の食文化を学ぶ一環として、解体作業を見学させてもらった。
子どもなど、写真を見てショックをうけることもあるかもしれないと考え、掲載写真は小さめにしました。興味がある人は写真をクリックして、ごらんください。
クネンポウというミカンがある。在来種で、ずっと昔から栽培されていた。
「果汁がなく、スカスカしていて、果汁がとれない。もちろん、そのまま食べてもおいしくない。どうにもならないミカンやね」と農家のおかみさん。jなかなか、ひどいことをいう。
「そのミカン、なんに使うんですか?」
「えっ、ミカンの味噌漬け?」
「そう、おいしいで」
味噌漬けにしかならないミカンがあるとは知らなかった。あまり役にたたないイメージ。無能無才、生きることに不器用な私は、なんとなく、この風変わりなミカンに親近感を抱いた。そのまま、クネンポウに出会うこともなかったが、きょう、おかみさん市のおもてなしバイキングに、味噌漬けが登場。
「これ、おいしいですね」何人ものお客さんにそういわれた。クネンポウ、意外に人気がある。
食べてみたら、柑橘の味。それでいて、漬物になりきっている。いい味だった。おいしいというだけではない。キュウリの浅漬け、奈良漬け、タクアン……ほかの漬物をひきたてる。クネンポウ、じつは、すごいやつだった。(皿洗い 斉藤)
「あついお茶をかけて、2分もたったら、焼き米がふやけておいしくなる」と、農家のおかみさんは説明しながら、焼き米を入れたお茶碗にたっぷり、番茶をそそぎいれる。塩を少々ふりかける。
「さあ、そろそろえい頃」
庭に干している落花生をながめていると、すぐに茶碗がさしだされた。なるほど、焼き米はすこしふくらんでいる。お湯を吸って透明感も増している。
「いただきます」
お茶漬けのように、サラサラと食べる。
米とお茶だけでは素朴すぎる。それほどおいしいことはないだろうと、たかをくくっていたが、まったく違った。
つぶつぶした食感。米のほんのりした甘みとお茶の香りと調和がとれている。塩加減もちょうどいい。ひと粒ひと粒、かみしめるので、たっぷり米のおいしさが堪能できるのだろうか。お米がこんなにおいしいなんて……。
「おいしいですね」
感動しつつ、農家のおかみさんをみると、にっこりわらっていた。(斉藤)
「こんばんは」庭先で声をかける。
「はーい」小屋から声がかえってきた。
中をのぞくと、香ばしい匂い。農家のおかみさんが、かまどの大釜でなにかを炒っている。かまどのふちに腰かけ、大きなしゃもじで、炒っているものがこげつかないよう、ゆっくりかきまわしている。
「なにをつくっているんですか?」
「おいしいもの。できたら、たべさせてあげる」
おかみさんは、にこやかな顔をあげる。
「ありがとうございます。なにができるんだろう? たのしみだなあ~」
そのあと、釜の中のものについて質問をして、わかれた。
届けなければならないものがあることは、すっかり忘れていた。
(野菜集荷人 斉藤)
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